雪が降る日暮れ時。ここ数日の荒れ模様の天気で港町カナエニアは一面の銀世界。
カナエニアで働く人々は、クリスマスが近いからうきうきした気分で家路を急ぎます。
そんな中、トナカイが曳く橇にのったキンタとケイは、港を見下ろす丘の家セイヤに到着。
12歳の誕生日を迎えたケイが初めて見る丸太で出来た大きな家です。
玄関の表札には「星夜(セイヤ)」の文字が。橇を降りた二人はキンタの案内でセイヤのドアを開けます。
キンタが家の明かりをつけると、そこには色とりどりのミニチュアがありました。
「キンタおじさん。ここは一体どこ、それにこれはいったい何なの」
「この家はおいらの隠れ家。それにたくさんのミニチュアはおいらが独りで作ったものさ。
全部でき上がったらカナエニアの港を模ったジオラマにするつもりなんだ」
「わあ、すごいなあ。その大きなクレーンは今にも動き出しそうだね」
「いやあ、まだまだ。完成まではこれからさ」
「キンタおじさん、連れて来てくれて本当にありがとう。
でも弟や妹は家に残して、どうしてぼくだけに見せてくれるの」
「ああ、それはね。ケイが12歳になったからさ。
男の子は12歳の誕生日を迎えないと、セイヤへは来られない決りがあるんだ」
「へえ、それって大人になったということ?」
「ああ、そうさ。これから蒸気船のミニチュアをもう一隻作るからケイも手伝って」
眼を大きく見開いたケイの喜びようと云ったら。それはそれは言葉になりません。