■あらゆる困難を救う十一面観音
衆生の様ざまな困難や苦しみに対応するため、すべての方向に顔を向ける十一面観音菩薩。日本では平安時代以降、民間信仰と結び付いて広く信仰されるようになりました。その作例は各地に遺されているものの、国宝指定像はモデル像を含めわずか7体。右手は衆生のさまざまな願いを聞き入れる与願印を結び、左手には煩悩を消す甘露の水が入った水瓶を掲げています。
■若くみずみずしい平安時代の美仏
モデルは平安前期の作とみられる国宝「木造 十一面観音立像」。尊顔の目、鼻、口はいずれも小ぶりに造型され、ふっくらした頬と相まって可憐な少女のようでありながら、しっかり肩の張った重量感ある体躯を持ち合わせ、極彩色の板光背と相まって密教像ならではの迫力と、どこか不思議な雰囲気を醸し出します。近代以降、多くの文化人から愛され、今なお変わらぬ美しさで私たちを魅了します。
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